出生前診断をうけるかどうかについてはいろいろな意見があると思います。不妊治療や流産を繰り返したあとに、やっとやっとの妊娠の方もいらっしゃると思うので、すべてのひとに「絶対いいよ!」とおすすめできる検査かどうかというと難しいです。
遺伝子異常は確かに「高齢だと発生率が高くなる」という傾向があります。これは卵子の劣化が理由ですが高齢だから必ずしも異常が発生するという(心配しすぎる)ことはないですし、逆に若いから異常が発生しないという(手放しに喜べる)ことはありません。若くても受ける方はいらっしゃいます。
※ちなみに卵子は生まれたときに保有数(個数)が決まっています。なので高齢になるほど卵が古くなりリスクが高くなるということになります。
また、遺伝子異常がなくとも、生後に脳内部に異常(発達異常)が現れることもあるのは承知の上です。
先日、羊水検査を経験してきた私ですが、検査の意義や、やって良かったか、後悔していないかなどを冷静に整理していきたいと思います。
羊水検査を受けようと思ったきっかけ
海外での検査状況
羊水検査に「特別な検査」という認識はありません。
35歳以上であればみんなが受けることができる「一般的な検査」のひとつです。いまではNIPTを受ける方が多いようですが、欧米では義務ではないけれど適齢の妊婦はNIPTか羊水検査を50%以上の人が受けるようです。ちなみにフランスでは84%以上。もちろん保険が効いたり定期検診の1項目として受けられるので、ほぼ無料〜ほんの少しの負担額で受けられます。金銭的負担がないからみな受けるという理由もあります。
そして、命の選択という認識があまりありません。それもひとつの選択肢であることは確かですが「陽性でも産む」と決めていても受ける方もいます。「どちらであってもどうせ産むから受けない」という方は少ないようです。なぜなら、こどもを迎え入れる前にあらかじめ知識を増やしたりいろいろな準備ができるからです。前に進むための検査のひとつとして私は捉えています。
胎児ドックの結果
私の場合、胎児ドックも受けています。その結果、21トリソミー(ダウン症)確率が1/4以上と判定されました。カウンセラーにとても不安を煽られ不安に陥ったことが羊水検査を受ける動機になったことも確かです。
産院の担当医の所見では38歳という年齢では軽微な「標準外」があるだけでもこの高確率になることがあるので、あまり心配しすぎないようにとは言われたけれど、それにしても確率が高くかったので不安になりました。
小さい頃の経験
小学校の同級生に1人。よく遊んでいた父親の友人の女の子もまたダウン症だった。後者の子は見た目には分からなかったがそうだったとのことをこの機に母から聞きました。見た目に問題はなくても遺伝子異常があるというケースがあることを知り、調べてはっきりさせたいと思いました。
遺伝子検査をしない場合いつごろエコーでわかるか
一般の産院の普通のエコーでは初期にわからないことも多いです。NTのむくみがなんとなくわかり、なんとなく計測してくれたとしても認定医でない限り正確な判定はわかりません。ただ「すこし気になる」のでということで各種検査を受けるように専門医での診察を勧められるかもしれません。
NTなど目立った所見がない場合、中期〜後期になって「発達が遅い」などの症状で指摘されることがあるそうです。
検査費用・リスク・危険性(針を刺すということ)
費用
平均15〜20万円。
後遺症・流産リスク
今は、1人/1000人くらいの確率だそうです。これには母体の状態による原因と医者のスキルによる原因の2通りがあるそうです。ただ、医者のスキルがいまいちであったとしてもほぼ流産に至ることはないそうです。
代表的トラブル理由
- 注射が子宮収縮を引き起こすことによる。
- 注射による破水、穿刺した場所が動くときに力の入る場所だったなど。
- 傷口(注射跡)からの炎症
- 切迫流産の傾向がもともとある人
流産になる確率が高い方は「陽性」と診断された方に多いとも書いてありました。検査によって誘引されるのでしょうか。
痛み
これは、お医者さんによるようです。私は1箇所のみの麻酔であいたたー、程度で済みましたが、3箇所打たれたというお話もありました。ネットでいろいろ情報を集めていると、無麻酔でうけたという猛者もいらっしゃいました。
羊水取得中の痛みもお医者さんによるようで、しっかり麻酔が聞いたのを確認して抜かれるともちろん痛くありません。タイミングが早すぎたり、吸引が早いと痛いという記事がありました。私は1分くらいだったでしょうか。そんなに長くなかった気がします。逆にゆっくり3分以上かかったというお話もありました。
検査後の回復
横になっている時間は、私は1時間でした。3時間のところもあれば、1泊入院での絶対安静という病院もあります。45時間絶対安静(寝て過ごせということ)を指示されるところもあるようです。
陽性となった場合はどうするか決めておく
育てていけるかを感情抜きに考え答えを出す必要があります。13・19トリソミーならまだしも、21トリソミー(ダウン症)の子はいまや40歳以上生きます。寿命が健常者と変わらないくらい長いのです。
未婚・独身の場合
補助金や助成金は多めにもらえますが、金銭的には普通の異常のない子たちよりか多めに費用がかかるといわれています。また、手をかける、目を配る必要があるので、保育所に預けて自分は仕事へ〜という普通のシングルマザー的過ごし方は難しくなると想像できます。
小さい頃〜20歳くらいまではまだよいでしょう。ですが、私が死んだあとに成人した子どもの面倒を見てくれる人がいなくなります。年老いたあとや自分の身体が思うように動かなくなってきたらどうするか・・・、対応できるか、資金的に大丈夫かなどよく考える必要があります。
よく考えた結果、私の場合は「育てられない」という結論に至りました。
担当医は「ぱっと見た感じ問題はない」と言ってくれていましたが「育てるのは私なのでハッキリさせたいです」といい鵜呑みにしませんでした。物理的に異常がなくても遺伝子異常があることがある、というケースを知っていたためです。
既婚・既に子どもがいる場合
先に生まれた子がいる場合は、もしも自分が亡くなったあともきょうだいが面倒を見ることができるので、その子が生きていくのに必要最低限のヘルプは受けられるでしょう。
検査クリニックの探し方
価格で選ぶ
2020年現在、だいたい15万〜20万くらいが相場のようです。5〜10年くらい前だと10〜20万程度とまだ安かったようですが、どう調べても「12万円代でやってます」という病院の情報はありませんでした。通院中の産科ですると15万を切る場合もある、との情報はありましたが詳しくは記載されていません。
電話で「15万ほど」と言われた場合は、たいてい「羊水検査」のみの費用のようです。つまり、術前後費用がその他にもかかる。問い合わせる際には後述の「申し込み」の確認ポイントを必ず聞きましょう。
安いクリニックは「安心できるクリニック」とは別の問題です。お腹に穴を開けるわけですので、値段だけで飛びつかないようにしましょう。
大学・総合病院で選ぶ
検査にはいろいろ条件があると思うので問い合わせの際によく確認してください。
ただし、大病院ではよくあることですが、実際に検査を行うのは「研修医」かもしれません。デメリットも考慮しておいてください。
専門医(街の)で選ぶ
協会や資格を持った専門医が開業したクリニック、不妊治療クリニック、定期検診や検査のみを行っているクリニックの他に最近は美容整形関連クリニックでも行えるようです。
資格を持った専門医のクリニックや、学会に所属しているクリニックの先生にお願いするのが安心かと思います。
産科に付属している場合
通い慣れた病院で、いつもの先生が担当してくれるので安心かと思います。どのくらいの頻度で検査を行なっているのかは確認してみてください。あまり少ないようでしたら、他で受けても良いと思います。
大阪北摂付近となりますが、羊水検査をしている病院一覧・費用はこちらにまとめています。参考までに。
「する」と決めたらスケジュールを確認する
申し込み<14週〜15週まで>
羊水検査の申込みや問合わせ自体は、〜14週までに行うと良いです。人気のある病院・総合病院・大学病院などでは14週に連絡すると既に予約がいっぱいで受け付けてもらえなかった、ということがあるようです。電話では申し込みに必要な条件を確認しましょう。一部の病院では35歳以下は受け付けないなどの年齢制限を設けていたり、配偶者がいない方は受付できないなどの制限があります。
確認ポイント
- 年齢制限の有無について(35歳↓)
- 紹介状の有無について
- 配偶者(同伴者)の有無について
- 費用がいくらか(カードはOK/NGか)
- 検査前後の診察費・初診再診料など、その他にかかる費用があるか
- 検査前後に何回通う必要があるか
- 日帰りでできるか
- 印鑑・はんこは必要か
ルールとはいえ、配偶者の有無で省かれるなんて確実に「差別」ですよね・・・💧 電話してそう言われたときは、めちゃくちゃ不愉快でした。
診察(初診)<14週〜15週>
問診はすべての病院であると思いますが、検査前の診察内容は病院によって違うようです。私の行った千葉先生のところでは「胎児ドック並みの詳細なエコー」がありました。大学病院ではいくつかの科を廻ることになった、などの情報が見られました。他に電話で聞いたところでは「簡単な問診のみ」と言われた病院もありました。
診察で行われそうなこと
- 検査への動機等の問診
- 出生前羊水遺伝子検査とは、の説明
- エコー
- 同意書への記入
検査実施<15週〜16週>
大きな病院では半日くらいかかったりすることもあるようです。個人の専門医や産科でする場合は、2時間見ておくと良いでしょう。
15週以下だと羊水量が足りず実施できず、17週以降だともしも何かトラブルがあった場合に、中絶可能な22週に間に合わない可能性があるため16週以内となっています。
日本では倫理的にDNA培養検査が取り扱えない(扱わない)研究所が多いため、ほとんどの検体は海外(基本はアメリカ)に送られます。2〜3週とされているのは「検体の送付日数+検体を培養する時間+欧米では一般的な検査のため”待ち”も発生する」と考えると納得できます。
診察<検査後3日程度>
傷口(穴を開けたところ)の経過観察のための診察です。この診察をしない病院もあります。
結果通知<17週〜19週>
検査実施後およそ2〜3週間で検査結果が返ってきます。結果が病院に届いたら、病院の方から連絡があることが多いようです。ですが、あらかじめ予約を取っておき、早く結果が届いても知らせてくれない病院もあるとのことです。
たいていの病院が「電話での通知」は行っていません。必ず対面での結果通知表の説明があるようです。
陽性の場合
中絶手配または分娩病院の変更・協会やサポート調査
生まないと決めた場合
中絶可能病院を紹介してもらうか帰宅後に調べます。まだ19週ならしばらくは猶予があります。でも早いに越したことはないというのでなるべく早いうちに決め、予約をするほうが良さそうです。
産むと決めた場合
いちばんに連絡すべきは産院です。分娩病院の変更の必要性があるかなど、電話でまず簡単に話すと良いでしょう。エコーにて胎児の身体にまったく異常がない場合はそのまま産院で対応が可能だと思いますが、もしどこか1箇所でも異常がある場合は、総合病院や大学病院のサポートを受けるほうが安心です。
陽性であったことを分娩予定の産院に伝えると、分娩時の安全を考え、転院をすすめられることもあると思います。
その他にしておくことといえば、以下のようなことです。
- 専門に研究しているお医者さんを見つける。
- ケアセンターを探しておく。
- どのように育てればいいかの勉強する。
- 家族・親戚に伝えておく。
- 障害者を持つ家庭などのサークルへあらかじめ連絡を取っておく。
後悔
まったくありません。
安くはない費用がかかりますが、無駄遣いしたとは1ミリも思いません。私の場合、まだ結果は出ていませんが陰性であっても陽性であっても知りたいと思う気持ちは変わりません。どんな結果であっても「知って良かった」と思うはずです。
35歳異常であれば無条件で高齢妊娠・高齢出産となるので卵子の状況的に遺伝子異常が出る確率は高くなってしまいます。また、体力も若い方々のようにあるわけではないので、不安を抱いたまま出産を迎えるより早めに白黒ハッキリ結果を知って、不要な不安を解消したい。もし陽性でも体力的に早めに準備を始める必要がありますので。
ただし、胎児ドック・クアトロ検査等の不確定検査は「しなくても良かったな」と思っています。これらにはすこし後悔しています。受けると不安になるだけで何一つ確定要素がないのですから。確率的にこれらの結果が良かったとしても生まれてみると遺伝子的な障害があった、というケースもあります。
もしも、出生前診断を迷っている方がおられましたら、妊娠初期に受けるとしたら「NIPTまたは羊水検査」の2択しかないと私は個人的に断言します。胎児ドックは、中期〜後期で受ければ良いです。妊娠初期では必要ないと思いました。まず、遺伝的確定診断ありき、次に後期胎児ドックで臓器の発達等をみるという手順がよいということを体験・実感いたしました。
終わりに
「針を刺す」「穴を開ける」というリスクはあります。ですが、そのリスクをとっても得るものはとても大きいと思うのです。
陰性であって欲しいという願いはすべての妊婦さんとその家族が願うことでしょう。でも、なにがあっても産むと決めていても、やらないよりやったほうが良いと思います。なぜなら、もし陽性であっても上記のようなことをあらかじめ事前に用意しておくのと、生まれてから用意するのでは大変さが違うはずです。環境の準備も、心の準備も整います。
特に、ケアセンターやサークルなどは、いろいろな経験から、いろいろな知識を与えてくれるはずです。
ショックな気持ちを分かち合い、受け止めてくれますし、大変なことだけではなくこれからどんな楽しいことがあるかという希望についても聞くことができるでしょう。羊水検査は「命の選択」という目的以外にも「家族として迎える準備」という意義もあると思っています。
では!